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Andrew そのとおりだと思います。予後を判定するに当たってはさまざまな腫瘍学的な観点からの情報が必要です。どのステージであるのか、組織学的検査の結果、どこかへの転移がないかどうか、その患者の病歴の長さによってステージングをやっていくというやり方を聞いたことがある方はおられますか。
−質問があるのですが。予後を判定する時期、その病気の全体の長さ、いつ予後を判定するのかによって違ってくると思うのです。だから病気の時期、ステージングで判断するのは、おそらく診断する時あるいは治療している時だと思うのです。いま質問なさっているのはターミナルステージになった時の予後ではないかと思うのですが。
入院時に賊限の欄をキャッチ
Andrew いまのコメントには部分的にしかイエスと言えないのですが、先に何が死の引き金になるのかという質問をしました。最終的に死の道筋を歩いていくようなきっかけとなるのはいったい何であるか。これは日野原先生もおっしゃっておられたように実際的な観点からとても大事なことです。
死が間近に迫っている場合の兆候はあとでWendyから説明してもらいますが、その前に患者さんの病気について知っておかなければならないこと、発見しなければならないことがあると思います。それを知ることによって腫瘍のバイオロジー、ナチュラルヒストリー知ることができるそういうタイプの情報なのです。このデータを見ていただきたいと思います(略)。肺癌あるいは直腸癌の診断が下されたときに、まったく無症状の患者もいます。原発腫瘍の症状のみの患者さんもいます。それからまた初診の段階で全身の症状が現れている人もいる、たとえば体重が減少したり発汗がひどかったりということです。またもうその段階で転移による症状が出ている人もいる、たとえば肝腫大やまた脳に肺の癌が転移をしている人もいます。
1967年にファインスタインは500名から600名を対象としてデータをまとめています。そして肺癌と直腸癌の場合には症状の状態に違いがあるということを示しています。いちばん最初に来院をした段階での症状の有無、それからまたどのくらいの期間その症状が続いていたかということに差異が認められます。そして彼はこれをもう少しシンプルにまとめなおしています。そして長期にわたって原発部位の症状があった場合と、まったく無症状の癌をまとめて不活性(indolent)な腫瘍と呼んでいます。それから短期間原発部位の症状が発症しており、それに加えて全身症状が認められるタイプの腫瘍を顕在型(obrusive)と呼んでいます。それから転移による症状が出ているものを破滅的な腫瘍と呼んでいます。そして肺癌について、いまのやり方で5年生存率を見てみますと、病理的段階との相関がかなり高いということがわかりました。このステージングについては限局化されたものと組織周辺性のものと遠隔転移のものと三つに分けています。
このサンプルの5年生存率は7%でした。この7%というのはみなさんなるほどと思われる数字だと思います。そしてステージジグの限局性のものの数字16%と、不活性の17%は、相関性が高い、それから遠隔的な転移がある、破滅的な状態にある人は0%ということで、ここでもかなり相関が高くなっています。そしてその中間として顕在型というのが入っています。
このような腫瘍のヒストリー、テンポと腫瘍のステージングの関連性というのは直腸癌の場合にはもっとはっきりと出てきます。ファインスタインの研究です。
5年生存率を見てみますと、不活化のものの数字と限局化のものの数字がかなり近くなっています。拡大性のものは非常に悲惨な予後になっています。
患者さんが緩和ケアに紹介されてきたその段階において患者さんの腫瘍のステージングについて得られる最大限の情報を得ると同時に、その患者さんの腫瘍のヒストリーおよびテンポについて十分に理解をし、その腫瘍がどういうバイオロジーをもった腫瘍であるのかということを理解することが予後の判定にきわめて重要です。ホスピスの医師はそういった情報を病院から得る権利をもっていると考えていいと思います。そうでなければ患者およびその家族に対して最善のそして最大限のアドバイスを提供することができなくなってしまいます。
その他にも予後の評価の方法はあります。たとえば患者さんのパフォーマンスステイタスがどのようになっているのか、実際の臨床でパフォーマンスステイタスをお使いになっている方はいますか。

 

 

 

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